原付二種は「原二」と呼ばれることもある小さな排気量を持つオートバイの区分。この小さなバイクが1台あるだけで、日常からスッと抜け出すこともできます。旅の相棒として、走ったことのない道を行く冒険の相棒として、生活をリフレッシュする相棒として、これ以上に使える乗り物は他にはないと私は思っています。

そんな「原付二種」にこれから乗って楽しもうとされているあなたへ、バイク歴30年以上の経験から知っておいてほしい基礎知識をまとめました。

原付二種とは

原付二種とは、正式には「第二種原動機自転車」と言います。排気量が50cc超えから125cc以下のバイクです。表にまとめると以下のようになります。

排気量ナンバーの色
50cc超えから90cc以下黄色
90cc超えから125cc以下ピンク
原付二種の区分

免許区分で存在する四輪の「二種免許」というものがありますが、これは旅客自動車(タクシーやバスなど)を運転するための免許なので、原付二種とは全く関係はありません。

原付二種の免許の取り方

原付二種に乗って公道を走り楽しむためには、「小型限定普通二輪免許」が必要になります。50ccのバイクを運転できる「原付免許」だけで原付二種を運転してはいけません。また、普通自動車免許をお持ちの方なら自動的についてくる「原付免許」も同じです。この免許だけでは原付二種を運転することはできません。

そこで小型限定普通二輪免許を取得するためには、どのような方法があるのか見ておきたいと思います。

運転免許試験場で一発試験を受ける

運転免許試験場で筆記と実技の試験を受けることができます。合格すれば、その日のうちに免許証が交付されます。受験費用も4000円程度なのでスムーズに受かればお得です。

しかし、実際には運転免許試験場での一発試験は非常に受かりづらいです。そもそも緊張しますので実技で失敗することが多いです。例えば、停車状態からバイクに乗るときなど、自転車感覚で乗るとNGです。しっかりと後方確認をしてから乗る必要があります。また、足を地面につけるにしても、基本は左足のみです。右足を付けていいのは停車時くらいです。

教習所で取得する

こちらが一般的です。一発試験よりも時間はかかりますが、教習所の中の安全なコースで練習できますのでコケても安心です。また合格後に公道へ出ても、安全なコース内で走っているので少しは気持ちに余裕を持てます。

原付二種AT限定の注意点

二輪の免許にもAT限定があります。これはクラッチ操作を必要としない機能を持ったバイクだけ運転しても良い免許です。教習所の場合は教習時間もクラッチ操作が必要な免許より短くなります。また、実技もスクーターを運転するのと同じなので、自転車に乗れる方なら問題なく運転することができるでしょう。

もしあなたが原付二種免許を取得して、次のようなバイクに乗りたいのならAT限定がおすすめです。

  • HONDA PCX
  • YAMAHA NMAX
  • YAMAHA シグナスX
  • YAMAHA トリシティ125
  • SUZUKI スウィッシュ
  • SUZUKI アドレス125

または、最近大変人気のある次のバイク達もクラッチ操作が必要ない「自動遠心クラッチ」搭載車なのでAT限定免許があれば乗れます。

  • HONDA クロスカブ110
  • HONDA CT125ハンターカブ
  • HONDA スーパーカブC125

いっぽうで、次のようなバイクにも乗ってみたいのなら、AT限定はおすすめできません。クラッチ操作する方(AT限定じゃない方)で免許を取得しておきましょう。

  • モンキー125
  • グロム
  • CB125R
  • Z125PRO
  • GSX-R125
  • KTM 125DUKE

他にもアプリリアの125ccを筆頭にイタリアの125ccもあります。こういうのはクラッチ操作が必要なので、自分が乗りたいバイクの特性を理解して、AT限定にするかどうか決めましょう。

原付二種のメリット

原付二種には、次のようなメリットがあります。

(1)取り回しがラク

車両重量が軽いのでバイクの出し入れがとってもラクです。バイクのサイズも小さいのでエンジンを切った状態で動かすのもラクです。

(2)維持費用が安い

自賠責保険も原付二種は安いです。税金も安いです。

また、走ると必ず必要なガソリン代も大変お安くて済みます。基本的に原付二種は燃費が良いので、ガソリンの減りも少ないです。モンキー125の場合ですが、リッター56kmくらいは余裕で走ります。

あと、オイル交換するときですが、大型バイクや車のように数リッター必要ということがありません。1リッター程度あれば十分なので、こちらの維持メンテナンス費用も少なくて済みます。

さらに万が一のときにあると安心なのが任意保険。普通乗用車をお持ちで任意保険をかけておられるのなら「ファミリーバイク特約」というものを原付二種では使えますので任意保険費用もかなり安く済みます。

(3)法定速度は60km/hまでOK

一般の普通乗用車や大型バイクと同じ条件で走れます。50ccのバイクのように30km/h制限はありません。道の流れに乗って走れますので精神的な負担も少なくなります。

(4)二人乗りできる

これはバイクによりますが、ほとんどの原付二種バイクは二人乗りできます。おそらくできないのはモンキー125くらいではないでしょうか。モンキー125は一人乗り用として作られているため二人乗りしてはいけません。

(5)二段階右折しなくていい

50cc未満のバイクで義務化されている交差点の「二段階右折」ですが、これが解除されます。車や他のバイクと同じように右折レーンから右折できます。

(6)Uターンも楽勝

二輪に乗っていて多くの方が「苦手」とおっしゃる「Uターン」。原付二種ならバイクも小さめですし重量も軽いので、ちょっとしたスペースがあればクルンと向きを変えられます。

そのため冒険心をくすぐられるような狭路も安心して余裕で楽しめます。

小型バイクだから楽しめる狭路な三重県道50号線を使ったツーリングコース

(7)30km/h規制がないのでツーリングしやすい

50ccでもツーリングできないわけではありません。しかし30km/h制限がないと、普段の生活圏よりも遠いところへ行くことができます。郊外へのツーリングもできますし、峠を越えていくこともできます。海岸線をトレースして走ることもできれば、電車やバスでは行きづらい牧場や農園、神社仏閣などへの旅も楽しめます。

伊勢志摩の風景

上のような風景を見ることもできます。また、交通の不便な場所から初春に走るローカル線の電車を見に行くこともできます。

初春のローカル電車(関西本線)

こんな不思議なモノと出会うこともできます。

エプロンパンダのコックサラダ油
コックサラダ油がなぜ「パンダ」?

原付二種のデメリット

メリットがあるということはデメリットもあるということです。

(1)自動車専用道路を走れない

原付二種で最も大きなデメリットは自動車専用道路(イメージしやすいのは高速道路ですね)を使って走れないことです。

私がツーリングしたルートで遭遇したのは、知多半島の自動車専用道路です。詳しいことは下のブログに書いていますが、もし原付二種で自動車専用道路を走れれば、同じ移動時間で遠くへ行って楽しむことができるでしょう。

知多半島「とこにゃん」ツーリング~京都山城から125cc下道コース往路編

“めんたいパークとこなめ”原二バイクで訪問~一泊ツーリング忍耐復路編

(2)ギリギリを追い越されることがある

原付二種で走っていると、後方からやってきた少し大きな自動車やトラック、大型バイクに右側スレスレギリギリを追い越されて怖い思いをすることがあります。快走路を走るときは、常にバックミラーで後方に注意しながら走りましょう。

後方からスピードに乗った乗り物がやってきたときは、左側によって先に行かせることがおすすめです。

(3)積載スペースが少ない

バイクそのものが小さいため、積載スペースは多くありません。そのためたくさんの荷物を積むためにはスキルと経験が必要になります。慣れれば二泊三日のキャンプツーリングくらいの荷物は余裕で積めますが慣れるまでは難しいです。積載性を気にされる方は、カブやスクーターを選ぶと、簡単に多くの荷物を積んで走れます。

ちなみにキャンプじゃない場合なら、モンキー125やZ125PROでキャリアを装着していなくてもこれくらいの積載は作れます。

ミニサイドバックと完全防水バックとタンクバック

これだけ積載スペースが作れると、宿を使った二泊三日ツーリングは余裕です。カブだったらホームセンターで販売されている大きめのプラスチック箱(通称「ホムセン箱」)を使えば、ほとんどの荷物を積んで走れます。

原付二種でツーリングに行くなら知っておきたい道路標識

最後に原付二種の免許を取得して、ツーリングへ行こうと考えておられるのなら、次に紹介する道路標識を知っておいてもらうと、心に余裕を持って楽しめるでしょう。標識の意味は原付二種視点で書いています。

標識意味
二輪の自動車以外の自動車通行止め

原付二種は通行できます。ヤマハのトリシティ125も「原付二種」なので通行できます。
二輪の自動車・ 原動機付自転車通行止め

原付二種は通行できません。観光地に多いので注意しましょう。
車両(組合せ)通行止め

この組み合わせなら原付二種は通行できません。道路では様々な組み合わせがありますので注意しましょう。
大型自動二輪車 及び普通自動二輪車 二人乗り通行禁止

原付二種に一人で乗っているなら通行できますが、二人乗りの場合は通行できません。
自動車専用

原付二種は通行できません。有料、無料関係ありません。この標識が出ているところへ入ってはいけません。
自転車専用

原付二種は通行できません。最近増えていますので注意しましょう。
自転車及び歩行者専用

原付二種は通行できません。
歩行者専用

原付二種は通行できません。
車両通行区分

表記されている車両区分の乗り物は、この場所を走らないといけません。左の例の場合ですと、原付二種はこの標識のある部分を走ることになります。
原動機付自転車 車の右折方法(二段階)

原付二種は二段階右折の義務はありませんので、他の車やバイクと同じように、右折レーンから右折できます。
環状の交差点における右回り通行

ロータリー形式の交差点を表しています。あまり見かけませんがあります。原付二種も標識の回り方に従いましょう。
入口の方向

高速道路の入り口です。原付二種は入れません。もし入ってしまった場合は落ち着いて進み料金所や管理事務所の駐車場まで進んで事情を説明しましょう。突然道の真ん中で停車してはいけません。事故に遭います。
入口の予告

高速道路の入り口の予告です。原付二種は入れませんので、この標識が見えたら走行レーンに注意しましょう。
国道番号

ツーリングで大切な標識です。色が剥げていてもわかるように形で覚えておきましょう。
都道府県番号

こちらもツーリングに重要な標識です。原付二種だからこそ楽しめるルートが多い標識です。覚えておきましょう。
原付二種のツーリングで覚えておきたい標識

日本の道路では標識があちこちにあります。一瞬で把握するのが難しいこともありますが、基本的な道路標識と今回紹介した標識を覚えおけば、入ってはいけないところへ進入してしまうことも少なくなります。原付二種にとって最も怖いのは、無料の自動車専用道路への進入です。

私の住んでいる木津川市の近くなら「名阪国道(国道25号線)」が典型的な道路です。しっかり入り口の標識を見てないと原付二種で進入してしまいそうになります。なんせ無料の自動車専用道路なので入り口にゲートがありませんので、その気がなくても入ってしまえます。地元民は知っているので進入しませんが、他府県の方が原付二種で進入してしまうことがあります。

もうひとつ標識で一瞬判断に迷うのが「軽車両」という言葉です。名古屋の国道23号線(名四道路)の入り口には次のような標識があります。

知多半島ツーリングで一瞬悩んだ標識

小特は「小型特殊車両」なのでわかります。耕運機やトラクターなどです。原付もわかります。50cc以下のバイクです。悩むのは「軽車両」です。

※標識の参照元:国土交通省 道路局(https://www.mlit.go.jp/road/sign/sign/douro/ichiran.pdf

軽車両とは?

軽車両とは、次の乗り物を指しています。

  • 自転車
  • 駆動補助機付自転車(いわゆる「電動アシスト自転車」のことです)
  • 人力車
  • 馬車
  • リヤカー

こういうことなので、上の標識が出ていても原付二種は通行してOKです。

さいごに

原付二種は気軽にバイクを楽しめる乗り物です。また、下道しか走れないのでバイクらしい昔ながらのツーリングを楽しめる乗り物だとも言えるでしょう。さらに、目を三角にして走るスーパースポーツやアドベンチャー系のバイクではありませんので、肩の力を抜いたまま非日常に没頭できるのもプラスの要素です。

そして忘れてはいけないのが、原付二種はバイクの運転の基本が身につく乗り物です。はじめて二輪に乗られるなら、いわゆる「中型免許」を取得しに行かれるかもしれませんが、一旦「小型免許」を取得し、バイクの基本を楽しんでからステップアップされた方が、長く二輪のある生活を楽しめると思います。

通勤や通学に便利な原付二種ですが、遠出できるスペックをもっていますので、これから一人でも多くの人に原付二種を所有していただき、あちこちのツーリングルートで「YAEH!」できればうれしいと思っています。